天人峡-小化雲岳
ウッズ氏を誘い天人峡からトムラウシを目指すが、あえなく敗退。ポンカウン岳に登頂できただけで、十分すぎるほど燃え尽きた。
明朝3時にクワウンナイ入渓で使う駐車場を出発。前日降雪あったが、除雪はしっかりされている。最初の急斜面を這うように登る。雪が少ないせいでかなり時間がかかるが、涙壁を登ることを考えればまだマシだろう。1時間ほどかけて急斜面をクリア。
ここから夏道に合流するために尾根上を東へ進むが、尾根の上も雪が少なすぎ。雪の上を歩いているのか、笹の上を歩いているのかわからん。仕舞いにはデカい岩が尾根を塞ぐ様に鎮座していて進退極まる。(こういうのジャンダルムっていうらしい。)最終手段、スキーを脱いでなんとか攻略。絶望的に時間がかかるっす。
徐々に東の空が明るくなってきた。雪がちらついて、星は見えない。予報は悪くないはずなんだけど。夏道に合流すれば雪は十分で、フッカフカのラッセルに心が躍る。日が昇ってから後ろを振り返ると、両方のほっぺたを真っ黒にしているウッズ氏が立っていた。毎週上ホロに通うとこうなるらしい。そんな彼の足元を見ると、なんと細板でここまでついてきていた。ロングコースにびびって、重くて太い板を諦めたのだろう。そんな彼は、後でこの細い板に泣かされることになる。
第一公園に這い上がると、現世のものとは思えない幻想的な景色が広がっている。視界は不良だが、あえてそういう演出がこの雰囲気を決めているのだ。ウッズ氏はここからの景色を楽しみにしていた様でご満悦。旭岳は見えないけど、それはまた次の機会っということで。ここまで5時間かかっている。時間的にトムラウシは無理なので、行けるとこまで行こう。せめてポンカウンのピークは踏んでおきたい。
あとは広い尾根をただ登っていくだけ。特筆することは何もない。しかし、過去に経験したことがないレベルの極寒だったことは忘れられない。風が強い訳じゃないんだけど、地吹雪攻撃が全身の体温を削っていく。久しぶりの指先マッハに悶絶寸前であった。防寒テムレスでなんとか乗り切ったが、あの寒さはテムレスに追加してオーバーミトンを履くべき。頭の中は、すでに下山後の温泉のことでいっぱいになっていた。
ポンカウン山頂まで残り2キロくらいのところで、ウッズ氏の様子がおかしい。どうやらビンディングのネジがぶっ飛んでいる。スキーがグラグラでヤバそう。温泉のことで頭がいっぱいになっている自分は「もう引き返しましょうか?」と提案したが、「ポンカウンまでは行く」とウッズ氏は諦めることを知らない。手持ちのドライバーでネジを締めながらそう言った。甘やかされて育てられた自分とは違う。
体温を維持するために、全身のエネルギーが消費されているのをリアルに感じた。補給しなければ死んでしまうと本能で理解し、行動食の菓子パンを食べ尽くしてなんとか登頂。ビンもげ寸前のウッズ氏もゴール。寒い。とにかく早く下山して風呂だ。このままでは死んでしまう。
僕はスキーモードに切り替わらないウッズ氏を急かしながら、標高を落としていく。どこまで降りても寒いったりゃありゃしない。風の弱くなる樹林帯に着くと、指の感覚も戻りようやく落ち着けた。シールを貼り直してトレースを辿り下山を急ぐ。最後は涙壁を無理やり滑って下山。12時間30分。無事下山できただけで、なんとも言えない多幸感に包まれた。
敷島の湯は天国。温泉っていいね。今日の教訓は「楽しく滑るだけが山スキーの楽しみではない」ということです。さて、明日は羊蹄いきましょう。