電気の沢

前夜祭

明日は電気の沢をやって、間違いなくボロボロになる。その覚悟を決めるため、酒池肉林。強い先輩達がいて心強いが、内心ビクビクしてずっと不安からは逃げられない夜だったのである。

まずは砂防ダム横から

心強い先輩達、去年もお世話になったウッズ氏とNJ氏、20年以上の登山経験を持つT氏とは(以前に面識はあったが)はじめまして。この布陣で敗退は無いが、足を引っ張らぬよう気合を入れざるを得ない。まだ酒が残っていたが、気温の上がった10時に入渓。

F1、地獄の始まり

砂防ダムとゴーロを超えてF1。ボロボロ剥がれる岩肌が恐ろしい。ここで落ちたら気持ち的に敗退してしまうので、万全を期して確保されながら挑戦した。やらしいところもあったが、特に難なくクリア。これは楽勝かと思っていたが、そんな期待は5分後に裏切られる。

デッド滝

ウッズ氏とT氏は、電気の沢に何度も訪れているベテラン。何の迷いもなく激流に突っ込んでいく。その強さの秘密は、ネオプレンウェアだけではなさそうだ。T氏によれば、この沢は毎年落石・崩壊で突破方法や難易度が変わるらしい。この滝は以前はもっと簡単だったそうだが、自分は激流に負けて何度もびしょ濡れになり震えが止まらなくなった。とりあえず、ネオプレンのウェアは買おう。

余裕のウッズ氏

気がつけば先回りし、水に落ちる後続を写真に収めるウッズ氏。何度その笑い声を聞いたか分からないが、ウッズ氏のお助け紐がなければこの滝は突破できなかった。登山でこんな敗北感を味わうのはいつ以来だろう。僕も彼のように優しい山男になりたいものです。ちなみに写真のピンボケは、沢の中が暗いからじゃなくて、震えが止まらないからである。

チョックストンの滝

この沢のハイライト、チョックストンの滝。中央の岩から登れば容易いが、あえて激流の中を挑戦する。ずぶ濡れで頭がおかしくなっていた自分もこの流れに逆らって挑戦した。生きて帰れますようにと神に祈りながら、冷たい水の中へダイブ。カナヅチの自分はうまく泳げず水を吸い込んで溺れかけるも、足のつっぱりを効かせて水線突破になんとか成功。救われたと思った矢先、公共の場では見せられぬシカの水死体を見つける。この死骸の水を飲み込んじまったのかと想像すると、強烈な吐き気にやられた。

でも、また行きたくなる

往復6時間程度の行動時間だったが、その濃密な体験に脳と心臓が追いつかない。辛い思い出ばかりで自分がこの沢に挑戦するのはまだ早かった気もするが、仲間に支えられながらボロ雑巾のように全力を振り絞れたことは、とても楽しかった。まずはみんなに感謝である。そして、もう一回り成長し(ネオプレンのウェアを手に入れたら)、再び電気の沢へ行こう。

下山後は皆と別れて、塩別のつるつる温泉からの山岡家。今は、肩周りの筋肉痛と両手の擦り傷が痛い。