赤石川(大雪山・層雲峡)
T氏とは「赤石川をやろう」と決めていた。沢登りシーズンの短い北海道の中でも、残雪状況が気になる大雪山の沢はチャンスが限られる。行くなら今しかない。まともな運動は沖縄旅行を挟んで1ヶ月ぶり、というナメっぷりだが、T氏と一緒ならなんとかなるだろう。紅葉滝を拝み左岸を巻いていく。岩にぶち当たって巻き直したりなんだりで4時間もかかってしまった。泊まり予定なので時間的に余裕はあるのだが気持ち的に焦ってしまったのかもしれない、あろうことかATCを水の中へ落としてしまう。必死に捜索するも再開は叶わず、無駄な全身浴によって身体がかなり冷えてしまった。身体が硬直して、スムーズに動けない。赤石川の魅力的なゴルジュを楽しむ余裕もなく、T氏についていくのがやっとだった。誠に申し訳ない。初日はゴルジュを抜けるのが精一杯で、1000m付近でテントを張る。焚き火が幸せだった。
二日目、冷たいウェットスーツに身を包み憂鬱な夜明けと共に歩き出す。一晩寝て体力が回復したのか、それなりに本調子だった。1時間の河原歩きの末、問題の「ヤスヤスの滝」である。右岸を巻く。150mほど標高を上げると岩肌沿いに踏み跡を辿っていく。かなりの距離を歩き降りられそうなところでザイルを垂らしたが、10mほど足りない。上から見た感じクライムダウンできそうだったが、それなりに急で足を滑らし滑落してしまう。両手両足でブレーキをかけながら、ずりずりと崖を滑り落ちた。10秒くらいだろうか。幸い小さな青痰を作るだけで済んだが、一歩間違えればやばかったな。T氏は上手にクライムダウンした。あとは難しいところはない。巨岩帯で楽しくアスレチックをこなし、飛竜の滝はやや緊張するが右岸をナナカマドとハイマツを漕ぎ捲く。どうでもいいが、飛竜の滝の命名者は間違いなく将棋ファンだと思う。竜王に昇格した我々が目にしたのは、カムイミンタラの絶景だった。命をすり減らした反動もあって、感動のあまり心が無になった。生きててよかった。夏道に合流すれば消化試合。普段は使わないロープウェイを課金してゴール。T氏と硬く握手をした。
赤石川覚え書き
- 捲きルートがかなり重要。失敗すると体力と時間を削られる。
- ザイルは最低でも50m1本。30mで突破した記録もあるが参考にできない。
- ザイル50m2本使えば、紅葉滝とヤスヤス滝で時間短縮できそう。空中懸垂になるだろうが。
- ゴルジュは泳ぎ必須。厚手のネオプレンが欲しい。
- ゴルジュ出口のふりこ滝は、名前の通りザイルを振り子代わりに使う。
- キャンプ適地はそれなりにあるが、飛竜の滝手前が最適かな。
- 有毒温泉の水は美味しくない。煮沸すれば硫化水素が減る(らしい)。水汲みできる支流は数カ所ある。
- 残雪は飛竜の滝のみ。
- 初日10時間、二日目6時間。
最高点の標高: 1973 m
最低点の標高: 683 m
総所要時間: 07:38:40