旭岳-トムラウシ山-天人峡

あの「トムオプ」から2年、大雪山縦走計画・第二章「アサトム」編。

あらかじめ天人峡にチャリをデポし、旭岳温泉深夜2時スタートを決める。何度も通っている旭岳はハイスピードでジャンプ。ヘッドライトを頼りにスキーコース、姿見駅、石室をパスし、山頂に着くとちょうど空が赤くなった。

アサトム・ワンデイ

これから歩く高根ヶ原~トムラウシ山までの稜線がズラーっと見える。モチベーション爆上げ。

薄暗い旭岳東斜面のシュカブラを避けつつ裏旭へ。計画では白雲岳に登るつもりだったが、岩の露出具合が激しく予想以上に遠回りになりそうなので華麗にスルーすることにした。下山が遅くなったことを考えれば結果オーライ。今日一日、そんな感じで「結果オーライ」な出来事が何度か続く。

高根ヶ原の雪も少なく、ところどころハイマツや岩が露出していてルートに迷う。次第に太陽が高くなり青空が広がってきた。雪も程よくゆるみ歩きやすいが、汗を掻きそうな日射にやられそうになる。

貴重な忠別岳ピークを踏むと、ようやくトムラウシが射程圏内に入ってきた。距離的にはまだ半分以上だ。

五色岳山頂からゆるゆるとトラバースしてヒサゴ沼へダイブ。鏡のように美しく輝いている。風も無いので最高の休憩スポットだった。

予報が外れてドピーカンとなり、体温調整が辛い。北沼は外の世界と完全に隔離され、噂通りの南極だった。そのままトムラ山頂までノーアイゼン。

トムラウシ山頂からの景色は何度も見ているが、今日のは特別な一枚だった。

シールを剥がして山頂からGo。いつも南面か西面だが、北面もそれなりに楽しめる。(東面が一番楽しいスキー適地らしいが、一度も滑ったことがない。)

トラバリや片シールを駆使しながら、ヒサゴのコルに到着。小化雲岳への最後の登りをヒーヒー言いながらこなすと、歩いてきた大雪山の下にゴールの天人峡が見えた。

後は滑るだけ、さぁ落ちていこう。旭岳を眺めながらの快適・自動運転(オート・クルーズ)、グングン加速していく。ここまでの苦労がようやく報われた。最高にマンダムな瞬間だった。

公園を抜け、森を抜け、そして「ド湿雪」の滝見台。最後のパンを飲み込み、重い雪を掻き分けながらウンウン歩く。ようやく天人峡が見えたら、最後の力を振り絞って、エスカルゴを増殖させながらグズグズの涙壁を斜滑降で降りた。マジで疲れた。

さて、今回は単独行なので車を取りに戻らなければならない。分岐まで戻れば「いで湯号」に乗れることはわかっていたが、非常に微妙な時間。スキーを担ぎ、天人峡を脱出。果たして間に合うか。(ちなみに、下山してから履くつもりでデポった「ワークシューズ」は何者かにイタズラされて片足しか残っていなかった。たぶん野生動物なんだろうけど、悪意のないイタズラだと信じよう。まぁ、また買えばいいさ。)

間に合わなかった。わずかに3分差。「こんなことならインスタの更新や自撮りを頑張るんじゃなかった」と言っても後の祭り。ちょうど芦別に登っている友人にLINEを送ってみたが「天人峡遠いからヤダ」と即答。車まで、12km+600m。もう最後まで頑張るしかないと全力を振り絞って坂を登るが、次第にあたりは暗くなり路面も凍結しそう。携帯の電波も怪しい。「こんなところでくたばって世間に迷惑をかけるわけにはいかない」と、自分を納得させる言い訳を作り残り9キロ地点でリタイア。タクシーを呼ぶつもりで電話をしてみたが、アホみたいに高い回送料を請求してくるので却下。「なんでこの国にはUberが無いんだ」と回線を切ったスマホに罵詈雑言を浴びせた。もうこうなったらヒッチハイクしかアルマジロ。ヒッチハイクなんて何年振りか忘れたが、両手を振って車に合図すると1台目で止まってくれた。温泉の宿泊客のカップルだった。本当にありがとうございます、きっと幸せな人生を歩むことでしょう。

ロープウェイ駅には、自分の車と「いで湯号」の二台。やはり縦走計画は、車を二台使ってやりくりするに限る。またはレベル5の自動運転が実用化されたらもっと柔軟な計画が立てられるようになるのだが、何年先になることやら。一安心して車に乗り込むとガソリン残量がわずか。最後の最後の最後でJAFにお世話になるところだったが、ギリギリ最寄りのガソリンスタンドの営業時間に間に合った。入山中の計画はほぼ完璧だったが、下山後の計画や準備が甘すぎた。結果オーライと言って済ませば軽いが、次回以降の計画にしっかり生かさなければならない。反省。

帰り際に厚真町の温泉「ヘルシーシャトー」で汗を流したが、日射にやられて顔の肌はボロボロ、唇はカッサカサだった。これからは、日焼け止め・リップクリームが必需品ですわ。

合計距離: 48020 m
最高点の標高: 2293 m
最低点の標高: 606 m
総所要時間: 14:15:33

シメはもちろん、ラーメンの山岡家。

Note

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