チトカニウシ山(留辺志部川北西面直登沢-湧別川南面直登沢(熊ノ沢))
チーム道北集結。今日はチトカニウシ山を西から東へ抜ける沢旅だ。ウッツ車を下山口(熊ノ沢)に回して、登山口へ移動。パッキングを済ませてまずは荒れた林道を歩く。砂防ダムから入渓。ダム湖の木は、青い池のように立ち枯れていた。下界は35度を超える真夏日らしい、こんな日は涼しい沢しかないだろう。小一時間ほど歩くとゴルジュ帯に突入。どれも巻けば簡単だが、各自水線突破して遊ぶ。初対面のA氏は今日が人生2本目の沢らしい。ゴルジュにご満悦の様子。
ゴルジュで水浴びしていると、突然ウッツ氏が「クマだ!」と叫ぶ。「なんの冗談だ?」と思って上流を見つめると、4〜5m級のヒグマ先輩がこっちに向かって歩いているじゃねぇか。緊張感は一気にマックス。あのツメで喉を切り、あのキバで頭を潰して、あの巨体で沢に沈めて殺されるんだと、生存本能が爆発する。一同「$%キャー#(A?#Oワー+]2!@」と言葉にならない奇声を発しながら、沢をUターン。自分でもビックリするくらい、めちゃ早いスピードで身体が反応していた。100mほど距離をとり、広い河原に出てふりかえる。さっきまで楽しく遡ぼっていたゴルジュを、パイセンが出て来ないかハラハラしながら見つめる。つい先日、近くの浮島湿原に人を殺めたヒグマが出たことを思い出した。こんなことならクマスプレーを持ってくれば良かったと反省、まぁそもそも持っていないんだけど。ここに来て敗退かと思ったが、「じゃぁ、行きますか」とウッツ氏。これが知床慣れしている山男だ。そろりそろりと一歩ずつ進んでいく。唯一の武器、沢屋のバイルが腰にあることを確認しながら。どうやらパイセンは崖を登って消えたらしい。ひとまず安堵するも、この先ずっと疑心暗鬼は止まらず、下山まで頻繁に笛を吹くことになる。
ヒグマに続いて、デカい雪渓が現れた。雪崩の跡だろう。一同下を潜るというが、自分は怖くて高巻くことにした。崩れたらまず助からないが、巻くのも結構リスキーだった。どっちもイマイチ。雪渓を攻略してまた幾つかの小滝を遡ると直登沢の二股に到着。ここから一気に沢筋が狭くなり傾斜がキツくなった。少し進むと、目の前にドドーンとV字谷が姿を現す。ここがチトカニの魔境か。所狭しと小滝が連なり、我々を見下ろしている。その挑戦的な態度に、テンションが上がらないわけがない。左岸は鋭い崖肌、右岸はツルツルの岩盤で、一つ一つの滝は小さいが際どいムーブを要求される。ホールドに乏しい滝は、右脚でジャミングを決めて突破した。滝を数えるのにも飽きた頃、ラスボス10m滝登場。落ちたら怪我は免れない。そして、ぬめりが強敵。T氏のリードで突破した。修羅場を経験している山男はカッコ良い。
滝を突破すると単調な詰め。適当なところで水を汲んで、藪漕ぎ天国へ突入。100mほど笹とハイマツを漕げば山頂だった。風が気持ち良い。一息休んで出発。下山は熊ノ沢へ。チトカニ名物の激パウ(笹)を堪能したら、沢筋に合流。上流はあまり綺麗ではないが、下流には面白い滝が何箇所か出てきて楽しめた。最後はウォータースライダーでお清めして沢を脱出。JR石北線に合流したら「スタンドバイミー」を再現して線路を歩きたいところだったが、快適な保守用の林道を歩いてウッツ車にゴール。日帰りとは思えない密度の濃い沢旅に大満足。アカギレがヒリヒリするぜ。下山後のボディーチェックで、マダニ3匹捕獲。こいつだけは仲良くなれない。
最高点の標高: 1446 m
最低点の標高: 594 m
総所要時間: 11:43:25