知床岬

今日は満月、やってやる。

ポロモイ岳を越えて、ようやく明るくなってきた。

生と死が交差するマジックアワー。深夜テンション。

国後から御来光。

振り返ると知床連山。

オホーツク海にはまだ流氷が残る。

鹿フンだらけの笹原。

知床岬。何もない。

岬周辺で水を汲めなかったので、樹氷でICEBOX。

太陽いらない。

さらば、地の涯。シリエトク。

フーディニのお腹部分に氷団子を入れておくと、いい感じに水分を含んだシャーベットになることを発見。晴天限定。

ポロモイ岳の北東面は、標高1000m未満とは思えないポテンシャルを持っている。

深夜3時にハイマツの海を見た時は絶望した。諦めなくてよかった。

カール地形。湿雪雪崩、雪庇崩落、滑落、落石に注意。

知床岬ワンデイは可能だ。今の僕ならできる。条件は3つ、積雪、天候、満月。残雪を使える3月末が唯一のチャンスだろう。これを逃せばまた来年ということになる。

相泊へ4時間のロングドライブ。車内で1時間仮眠をとり、深夜23時40分にスタート。思ったより雪が無くて危ぶまれるが、カモイウンベ川の尾根に乗れば残雪は豊富だった。満月の高曇りで、空全体がボヤんと明るい。クズレハマ川を渡渉して473鞍部を乗越す。雪は硬く、クトーが良く決まる。トラバースで距離を稼ぎ、ウナキベツ川の源頭へ。どこからとも無く、女の人の「ひひひひひ」と笑う声が聞こえてビビる。耳を澄ましてよく聞いてみると、自分のブーツの音だったりする。知床沼南東尾根から攻める。稜線手前で雪が無くなったが、デポ・ロープに助けられる。知床縦走では、誰しもここを使うんだろうか。知床沼の台地に到着するが、一面ハイマツの海で絶望する。頭の中に「敗退」の二字が浮かぶが、時刻はまだ朝の3時。諦めるには早すぎる、とりあえずいけるところまで行ってみよう。しばらく進んでポロモイ岳が見えると、思ったほどハイマツは薄い。雪を繋いで月夜のルート工作。ポロモイ岳手前でアイスバーン、クトーを装着した。本日の最高峰992mのポロモイ岳に到着。この先も雪を繋げば岬まで行けそうだ。シール付けたまま降りていく。ウィーヌプリを正面に捉える頃、国後から太陽が昇ってきた。焼けるように眩しい。私たちの山、ウィーヌプリ北西面から標高を落とす。やぶやぶガリガリバーン。トラばりつつ、獅子岩あたりまで滑り再びシールで歩き出す。鹿ネットを潜ると岬先端の笹原へ躍り出る。何の変哲もない鹿フンだらけの笹原を歩いているだけなのに、どういうわけか胸が熱くなる。山から下りて気温が上がったからだろう。岬の先端は、7時20分に到着。辿り着いたそこには、何もなかった。

さて。帰るためには、遥々歩いた足跡をもう一度歩かねばならん。灯台が、折り返し地点のパイロンに見えてきた。気温が上がって、雪は緩み歩きやすかった。その代わり、持ってきた水が無くなってひどい脱水症状にやられる。雪を噛みながら水分を補いつつ、ゾンビのように稜線を進む。太陽がギルティ。知床沼には、生々しいヒグマの足跡が。沼の台地から下りる方法を再検討し、一つ西のカール地形をチョイス。これが失敗。ありえない急斜度・狭地形を、滑落に注意しながら横滑りで攻略する罰ゲーム。ストレスで寿命が縮んだ。ロングコースの後半戦で、馬鹿みたいに集中力を要する作業をしてはいけないと反省。ボトムからカールを見上げると、圧巻の大迫力。こんなところ滑るところじゃありません。特にソロで。あとは登りと同じルートで下山。行動時間16時間20分、完全燃焼。体力的には余裕があったが、精神的に衰弱していた様子。下山後、人生で初めて幻覚を見た。仮眠とってから、再びロングドライブで無事帰宅。

合計距離: 48272 m
最高点の標高: 995 m
最低点の標高: 0 m
総所要時間: 16:18:04
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